NIPT(出生前遺伝学的検査)を受けた話

41歳で妊娠がわかり、幸せな日々が続いていた我々夫婦ですが、高齢で子供を授かった故の不安というのもあります。そのうちの一つが、ダウン症などの遺伝的な病気に関すること。

生まれてくるこの健康は全ての親の望みだと思いますが、我が家も例外ではありません。とはいえ、残念ながらそれを親がコントロールすることはできません。

もし生まれる前にわかる病気があれば、心構えを持って出産に臨むことができます。そういうわけで、NIPTを受けることにしました。

調べたところによると、各出産年齢におけるダウン症の発生確率は以下の通りのようです。

出産年齢別ダウン症発生確率

20歳 1/1,667

30歳 1/952

40歳 1/106

45歳 1/30

数字だけで見ても、年齢とともに発生確率が上がっていくことがわかりますが、グラフにするとさらによくわかります。

30歳頃までであればダウン症発生のの心配はかなり小さいですが、40代になると途端に可能性が跳ね上がります。45歳での出産となると、生まれてくる子供の30人に1人という確率になり、決して無視できない値となります。

私たち夫婦も41歳での妊娠であり、子のダウン症の発生確率は1%を超えるタイミングになりました。100人に1人という確率を高いと考えるか低いと考えるかは判断が分かれるところですが、私たちにとっては高いと思いました。この事実に至った私たち夫婦は、ダウン症のことを詳しく調べ、NIPTという検査にたどり着きました。

NIPTは、ダウン症などの遺伝的21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミーについての可能性(陽性、陰性、判定保留)を調べるスクリーニング検査です。

高齢出産のリスク=ダウン症というイメージはありましたが、18トリソミーや13トリソミーというのはこの検査のことを知るまで聞いたことがなかったです。共通して、心疾患や臓器の異常、発達の遅れなどが見られるようです。

妊娠9週目〜18週目に採血により実施できますが、検査精度のことを考えると12週目〜13週目頃の実施が推奨されていると聞きました。早期NIPTといって妊娠6週目から実施できる検査もあるようですが、上記の精度の問題から、我が家では採用しないことにしました。

私たちがお世話になった病院は、19万円でこの検査を実施していました。異常なしであってほしい検査ですので、19万円を支払って手元に何も残らないのが最良の結果となります。掛け捨ての保険のようなイメージでしょうか。

検査の実施前、病院の先生に相談したところ、概ね次のようなことを言われました。

「20代や30代の夫婦であれば、障害をもって生まれる可能性は極めて小さい。一方、あなたたちの世代に19万円という費用は負担が重い。だから、若い夫婦には検査を強くお勧めすることはしない。しかし、40代となるとリスクも大きくなってくるので、検査を受けたいという方には受けていただくのも良いかと思う。」

先にも述べた通り、私たちはもう40歳を過ぎています。グラフにも示したように、40歳を超えると生まれる子が何らかの異常を持っている可能性が跳ね上がります。早い段階で子供の異常に気づくことができれば、様々な選択肢を取ることができます。

決して安い金額ではありませんでしたが、私たちは19万円でNIPTを受けることにしました。

検査実施から結果判明までは1週間〜2週間程度だったでしょうか。正確には覚えていませんが、ものすごく長かったような、あっという間だったような、とにかく検査結果が出るまでは気が気ではありませんでした。

結果は無事「陰性」でした。先生からその言葉を聞き、診察室を出てベンチに腰掛けた時、2人とも堪えきれずに涙を流してしまいました。緊張の糸が切れてか、はたまた安堵の涙か、とにかく今まで張り詰めていたものが急に解けて、力が抜けてしまったのは覚えています。とてもよく晴れて、1月下旬だというのに暖かかったのもよく覚えています。

もし結果が陽性だったとしたら…?まず、2人で悩んで、泣いて、悩んで、眠れない日々が続いたと思います。そして、どのような選択肢を取ったのか、今となっては知ることはできませんが、批判を覚悟で言えば、もしかしたら堕胎という道を選んだかもしれません。

ダウン症の人の場合、健康な人に比べて寿命は短い傾向にあるものの、長生きする人の場合60歳を超えるそうです。繰り返しになりますが、私たちは40歳を超えています。残りの人生、生きて40年くらいだと思いますので、ダウン症の子を残して夫婦2人とも死ぬ可能性は決して低くありません。障害があっても、自分のことを全て1人でできる子であれば問題ありませんが、必ずしもそうなってくれるとは限らないのでは?という不安がありました。親がどちらもこの世を去った場合、残された子はどうやって生きていくのか、想像することができませんでした。

妊娠したからには産むのが親の責任、という声があることは重々承知しています。しかし、子を1人で生活できる子に育て上げるのも親の責任であると私たちは考えました。そして、ダウン症の子を授かったとしたら、おそらくその責任を果たすことができないのでは、と考えたのです。

もちろん、ダウン症等の障害を持った子を産むことを批判するつもりはありません。どのような子であっても育てるということは尊く、親として正しい姿であることは疑いありません。しかし、反対の選択を取ることも決して間違いではないと思うのです。このことの是非に答えはないのだと思います。

「もし陽性だったら…?」と考えて葛藤することは今でもあります。ただ、NIPTを受けるという道を選んだ時点で、きっと私たちの選択肢は決まっていたのだと思います。

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